エッセイ

2016-02-01
(第3296話)チョット中休み エッセイvol.125 社交ダンスが上手くなる教室・展望(10)~通夜。2つの遺影〜 

前回の続き。

通夜

斎場に、遺影が2つ。
美しい祭壇
その前には、薄緑色とクリーム色の、
2つの棺桶が置かれている。

並んだ遺影
元気だった頃の、父と母。
懐かしい、会いたかった、顔だ。

たまらなくなった。

ワタシは、ドッと泣いた。

「お父さん、お母さん、
二人ともいなくなったんや」

未だ信じられない、でも、現実・・・
今まで味わったことのない、
深い悲しみだった。

が、同時に、すがすがしさ、
嬉しさも感じていた。
もっと言えば、感動。
しかも、魂が震えるような、激しいモノだ。
これまた、生まれて初めて体験する感情だった。

と、母の遺影に見入っていた、
ヒデくんが声を上げた。
「たぶん・・・コレ、
俺が撮ってあげたヤツや」

ヒデくんとワタシの挙式の時の写真、だという。
思い出した。
薄いイエローのツーピースも、
胸元のパール・ネックレスも、
ワタシがプレゼントしたモノだった。
フェミニン(女性らしい)な
母の一面が上手く撮れている。

「そういえば、お母さん、
(その写真を)気に入って
『遺影にしようかな』って、言うてたわ」

「ほんまに(遺影に)しはったんやなぁ」

父の顔も、なかなか男前に写っている。
これも、きっと、
父、お気に入りの写真なのだろう。

父も母も、早くから、遺影も戒名も作っていた。
理由は、
「ヒロコとジュンコに、
面倒をかけたくないから」

義理堅く、生真面目な両親は
「誰にも、面倒をかけず、
静かに世を去りたい・・・」
と、よく言っていた。
ところが、母が認知症になってから、
潜在していた“お家騒動”まで勃発。
ヒロコは、ある意味
「面倒をかけられ通し」だったはずだ。

いつまで、続くのか?
どうなっていくのか?

それが・・・突然の終焉、奇跡の結末。

会場内を見渡していたヒデくん、
ポツリと言った。
「綺麗や、な」
そう、なんとも、美しい、夢のような空間だ。

「遺影が2つって、
なぁんか、しっくりくるね」

左右対称。
バランスが取れていて、非常に良い感じなのだ。

しばらく、眺めていた。
そして、思った。

父と母は、今、幸せだ・・・
そして“解放”されたヒロコも、
“願い”が叶ったワタシも、幸せだ・・・

「うらやましい、という人、多いやろね」

すると、ヒデくん
「うちのオカン(お母さん)も、そう言うてたわ」

「俺たちだけじゃなく、
周りへの影響、めっちゃアルと思う。
お父さんと、お母さん、
最後に、最高の仕事、やりはったな」

ヒデくんの言葉に、改めて思った。

「そう、これは、
とんでもなく、凄いことなのだ」

ところが、だ。
まだ、先があった。

告別式
さらにとんでもなく、
凄いことになったのだ・・・

 

ミニ・ミニ ボイス

「私、何で、泣いているんだろう」
人が、心底から変わる時の、
素晴らしい現象なのです。
浄化作用
涙を流す機会があるのは、幸いなのです・・・

 

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2016-02-01 | Posted in エッセイ1 Comment » 

コメント1件

 mittu | 2016.02.01 16:45

お悔やみの言葉を申し上げますにも、
気にも、多く病みます。
わたくしの友人の多くも、この頃とみにお亡くなりになったり、
いとまなき時代に、遭遇して悩んでおります。
いたみ入る次第で御座います。
つらい時代です。

お気持ちを、つよくと、せめてものエールで御座います。

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